同社製品に関連する論文である、小保方晴子氏の2011年のNature Protocol誌の論文や、Tissue Engineering誌論文(小保方晴子氏は第二著者)において、利益相反事項を隠蔽していたことが判明し、研究倫理に違反するとして問題となっています。
利益相反隠蔽問題1 (岡野光夫教授)
小保方晴子氏の2011年のNature Protocol誌の論文は、(株)セルシード社の製品の細胞シートの性能に関するものでした。そして、論文の共著者である東京女子医大の岡野光夫教授や大和雅之教授は(株)セルシードの関係者であり、特に、岡野光夫教授は、有価証券報告書ではこの時点で同社株の大量保有者かつ役員でした(株式会社セルシード(E24158)の有価証券報告書(S0008294)によると東京女子医大の岡野光夫教授は2010年12月31日の時点で、当社株式138,000株と新株予約権1,010個を所有している)。このように、金銭的利益相反問題が存在するにも関わらず、このNature Protocol誌の論文には、”金銭的利益相反は無い(The authors declare no competing financial interests.)”と宣言していました。これらの虚偽記載もまた、彼女らの信用を大きく損なう結果となりました。
ノバルティスのディオバン臨床研究不正事件でも問題になりましたが、このような利益相反事項(論文出版により金銭的利益を得たり失ったりする可能性のある企業の社債や株の保有など)は、論文投稿の際に開示するべきとされています。特にNature Publishing はこの点に厳しく、その規定(Nature journals' competing financial interests policy)で、投稿する際には、投稿論文に利益相反があるのか無いのか、明記することを義務付けています。
↓ Nature Protocolの論文より引用
Competing financial interests The authors declare no competing financial interests.
以下の3項目は、Natureの規定で、"金銭的利益相反(Competing financial interests)"として定義された具体的項目です。
1) Funding: Research support (including salaries, equipment, supplies, reimbursement for attending symposia, and other expenses) by organizations that may gain or lose financially through this publication.
2) Employment: Recent (while engaged in the research project), present or anticipated employment by any organization that may gain or lose financially through this publication.
3) Personal financial interests: Stocks or shares in companies that may gain or lose financially through publication; consultation fees or other forms of remuneration from organizations that may gain or lose financially; patents or patent applications whose value may be affected by publication.
(日本語訳)
1) 研究資金: 論文出版により利益を得たり失ったりする可能性のある組織(団体)からの研究補助(給与、装置、備品、シンポジウム出席のための支援、その他の経費)
2) 雇用: 論文出版により利益を得たり失ったりする可能性のある企業によって、最近(研究プロジェクトに従事している間)、現在、あるいは将来的に雇用されること
3) 個人的な金銭的利益: 論文出版により金銭的利益を得たり失ったりする可能性のある企業の社債や株、金銭的利益を得たり失ったりする可能性のあるコンサルタント費やその他の報酬、論文出版によってその価値が影響を受ける可能性のある特許、または特許申請。
利益相反隠蔽問題2 (岡野光夫教授)
Tissue Eng Part A. 2011 Jun;17(11-12):1507-15. doi: 10.1089/ten.TEA.2010.0470. Epub 2011 Apr 12.
Development of osteogenic cell sheets for bone tissue engineering applications.
Pirraco RP1, Obokata H (小保方晴子), Iwata T, Marques AP, Tsuneda S, Yamato M (大和雅之), Reis RL, Okano T (岡野光夫).
- 1Institute of Advanced Biomedical Engineering and Science, Tokyo Women's Medical University, Tokyo, Japan.
東京女子医大の岡野光夫教授が責任著者の上記のTISSUE ENGINEERING誌論文(小保方晴子氏は第二著者)はセルシード社の関連の深い細胞シートに関する研究の報告をしています。
そして、論文出版当時、岡野教授はセルシード社大株主で役員でした。
しかしながら、岡野光夫教授らは論文中において、これらの事実に反して、金銭的利益相反を否定しています。
具体的に説明すると、Tissue Eng Part A誌( 17(11-12), 1507-1515.)論文中の "Disclosure Statement"の項目に、 "No competing financial interests exist." との虚偽記載があります。
なお、セルシード社ホームページのBone marrow stromal cells(骨髄間質細胞)の項でも、このTissue Eng Part A誌( 17(11-12), 1507-1515.)の論文は紹介されています。
利益相反隠蔽問題3 (岡野光夫教授)
Circulation. 2010 Sep 14;122(11 Suppl):S118-23. doi: 10.1161/CIRCULATIOAHA.109.927293.
Composite cell sheets: a further step toward safe and effective myocardial regeneration by cardiac progenitors derived from embryonic stem cells.
Bel A, Planat-Bernard V, Saito A, Bonnevie L, Bellamy V, Sabbah L, Bellabas L, Brinon B, Vanneaux V, Pradeau P, Peyrard S, Larghero J, Pouly J, Binder P, Garcia S, Shimizu T, Sawa Y, Okano T (岡野光夫), Bruneval P, Desnos M, Hagège AA, Casteilla L, Pucéat M, Menasché P.
岡野教授はセルシード社大株主で役員であるにも関わらず、セルシード社に関連の深い細胞シートに関するCirculation誌論文のDisclosuresの項目で、"All authors have reviewed the manuscript and approved its content. There is no conflict of interest to disclose for any of them." と利益相反の存在を否定。
なお、セルシード社ホームページのEmbryonic stem cells(胚性幹細胞)の項でも、このCirculation誌論文(2010 Sep 14;122(11 Suppl):S118-23)は紹介されています。
利益相反隠蔽問題4 (岡野光夫教授)
J Clin Invest. 2009 Aug;119(8):2204-17. doi: 10.1172/JCI37456. Epub 2009 Jul 13. Transplantation of cardiac progenitor cells ameliorates cardiac dysfunction after myocardial infarction in mice.
Matsuura K, Honda A, Nagai T, Fukushima N, Iwanaga K, Tokunaga M, Shimizu T, Okano T, Kasanuki H, Hagiwara N, Komuro I.
岡野教授はセルシード社大株主で役員であるにも関わらず、セルシード社に関連の深い細胞シートに関するJ Clin Invest.誌論文のConflict of interestの項目で、"The authors have declared that no conflict of interest exists."と利益相反の存在を否定。
なお、セルシード社ホームページのCardiac myoblast(心筋)の項でも、このJ Clin Invest.誌論文(2009 Aug;119(8):2204-17. )は紹介されています。
ちなみに、小室一成教授のグループの論文にも多数の疑惑が浮上しています。
【岡野光夫】再生医療の権威が語る、STAP細胞作製のインパクトと今後の展開 - YouTube
https://www.youtube.com/watch?v=KJIbqZ6ycdU
2016年2月27日に「撤回」と報道があった論文でしょうか。
返信削除(このブログはずっと読まさしていただいていました。お疲れさまです)
http://mainichi.jp/articles/20160227/k00/00e/040/212000c
小保方氏ら4人論文
英科学誌が撤回 共著者3人申し出
毎日新聞2016年2月27日 11時28分(最終更新 2月27日 14時27分)
英科学誌「ネイチャー・プロトコルズ」は、元理化学研究所研究員の小保方晴子氏(32)らが2011年に報告した論文を、1月13日付で撤回したと発表した。責任著者で日本再生医療学会前理事長の岡野光夫・東京女子医大特任教授ら、小保方氏以外の共著者3人が撤回を申し出たという。同誌は「小保方氏にコメントを求めようとしたが連絡がつかなかった」としている。
論文は再生医療に用いる細胞シートの性能に関する内容で、STAP細胞とは関係がない。筆頭著者は小保方氏で、共著者は岡野氏と大和雅之・東京女子医大先端生命医科学研究所長、常田聡・早大教授。
発表によると、論文内の二つの図が酷似しているなど複数の問題があり、共著者3人が、図の元データを確認できず、結果に確信が持てないとして撤回を申し出たという。この論文に関しては、STAP論文問題が発生した14年から、インターネット上で疑義が指摘されていた。【須田桃子】
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